乗算・スクリーンなどPhotoshopの描画モード27種類を比較して解説

※ Adobe Photoshop 2025の画像で解説しています。
※描画モードでの合成に使用した写真は「Adobe Stock」でライセンスを取得した素材です。(サイト掲載の写真・画像について

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Photoshopには、レイヤー同士をブレンドして様々な効果を生み出す「描画モード」が27種類あります。例えば、道路の写真に影を落としたり、背景の模様を文字に反映させたりする加工を「描画モード」を選択するだけで簡単に実装できます。

今回は、乗算・スクリーン・焼き込み・オーバーレイなど、Photoshopのレイヤーに適用する27種類の「描画モード」の比較と使い方を解説します。

描画モードを設定するレイヤーと効果の場所

Photoshopで描画モードを設定するのは、主として「レイヤーパネル」と「レイヤー効果のダイアログボックス」です。(その他、塗りつぶしや描画ツールのオプションにも設定場所があります。)

どちらも、以下の「通常」と表示されたボックスで描画モードを設定します。

描画モードを設定するレイヤーと効果の場所と描画モードの種類

描画モードとは?

「描画モード」は2つの色を上下に重ねてブレンドし、別の色を生成する機能です。描画モードを受けるベースレイヤー(レイヤーパネルで下に配置されたレイヤー)の色を「基本色」、描画モードを仕掛けるブレンドレイヤー(レイヤーパネルで上に配置されたレイヤー)の色を「合成色」、描画モードによって生成される色を「結果色」といいます。

描画モードとは何か?
レイヤーパネルで、基本色のベースレイヤーは下に、合成色のブレンドレイヤーは上に配置します。
グループの描画モード「通過」

Photoshopではグループ内のレイヤーからグループ外のレイヤーに向けて描画モードを設定した時はグループの描画モードは「通過」になります。「通常」のままだと描画モードの効果が反映されない仕組みになっています。

描画モードの使い方

Photoshopで描画モードを使う手順です。

  1. ベースレイヤーの上にブレンドレイヤーを作成し、選択します。
  2. 「通常」と表示されている小窓をクリックし、プルダウンメニューを引き出します。
  3. 描画モードを一つずつポイントするごとに結果色が画像に反映されます。
  4. 適用する描画モードをクリックして選択します。

描画モードの一覧

Photoshopのレイヤーパネルで画像合成する「描画モード」は27種類あり、6つのカテゴリーに分類されています(2025年現在)。

カテゴリー 描画モード
通常 通常
ディザ合成
暗くする描画モード  比較(暗)
乗算
焼き込みカラー
焼き込み(リニア)
カラー比較(暗)
明るくする描画モード 比較(明)
スクリーン
覆い焼きカラー
覆い焼き(リニア-加算)
カラー比較(明)
コントラストを強める描画モード オーバレイ
ソフトライト
ハードライト
ビビッドライト
リニアライト
ピンライト
ハードミックス
色を比較して合成する描画モード 差の絶対値
除外
減算
除算
HSL(色相・彩度・輝度)の値に応じて
合成する描画モード
色相
彩度
カラー
輝度

ここからは、種類別に描画モードを解説します。(※背景の写真を基本色(ベースレイヤー)とし、その上に重ねた写真と、黒・白のバーを合成色(ブレンドレイヤー)として、各描画モードでブレンドしています。)

通常・ディザ合成

通常」は、初期設定モードで「合成なし」の状態です。描画モードを解除したい時は「通常」を選択します。

ディザ合成」は「不透明度」に応じて基本色と合成色の両方がランダムに粒子状になります。不透明度を下げるほど粒子が荒くなるので、点描画のような効果を出します。滲みやかすれを表現するのに役立ちます。

通常・ディザ合成

比較(暗)・カラー比較(暗)

比較(暗)」は基本色と合成色を比較して、RGB値それぞれの暗い方(数値の小さい方)を選択します。「基本色 R:227 G:135 B:176」「合成色 R:139 G:149 B:222」を比較(暗)で合成すると、結果色が「R:139 G:135 B:176」になります。画像の重なり部分を自然に暗くしたい時に使われます。

カラー比較(暗)」は「比較(暗)」と同様にRGB値の暗い方を選択しますが、結果色は生成されず、基本色と合成色のどちらか暗い方をそのまま返します。特定の色を変化させずに画像に反映させたい時に使われます。例えば、背景より暗く、被写体より明るい色で背景をベタ塗りするような使い方もできます。

乗算

乗算」は基本色と合成色を掛け算してブレンドします。重なり部分が暗くなるのは「比較(暗)」と同じですが、黒はそのまま黒、白は消えます。黒は「0」なので、どの色と掛け算しても黒、白は「1」なので、掛け算した相手の色に置き換わるということです。「乗算」はレイヤー効果の「ドロップシャドウ」のデフォルト描画モードであるように、背景に影を落とすのによく使われます。

焼き込みカラー・焼き込み(リニア)

焼き込みカラー」は基本色の陰影をを暗くした上で合成色を反映します。暗くなった基本色に合成色の色が微妙に乗る感じです。基本色の影の部分がバーナーで焼いたように色濃くなって、コントラストがはっきりします。「乗算」や「比較(暗)」よりメリハリのある陰影を表現したい場合に使われます。

「焼き込みカラー」は陰影が暗くなりますが、「焼き込み(リニア)」は基本色が均一に暗くなります。「焼き込みカラー」より合成色の反映は強まり、コントラストは弱まります。暗くブレンドする時は「乗算」が多く使われると思いますが、「乗算」の結果色に合成色を強めに反映させたい時には「焼き込み(リニア)」を選択してみましょう。

色を暗くブレンドする描画モード
比較(暗)・カラー比較(暗)・乗算・焼き込みカラー・焼き込み(リニア)の比較

比較(明)・カラー比較(明)

比較(明)」は基本色と合成色を比較して、RGB値それぞれの明るい方(数値の大きい方)を選択します。「基本色 R:227 G:135 B:176」「合成色 R:139 G:149 B:222」を比較(明)でブレンドすると、結果色が「R:227 G:149 B:222」になります。合成色の白はそのまま白が返り、黒は基本色が返ります。黒いシルエットで背景模様を型抜きする使い方もできます。

カラー比較(明)」は「比較(明)」と同様にRGB値の明るい方を選択しますが、結果色は生成されず、基本色と合成色のどちらか明るい方をそのまま返します。「カラー比較(暗)」と同様に特定の色を変化させずに画像に反映させたい時に使われます。例えば、暗いシルエットに明るい色を均一に反映させるような使い方ができます。

スクリーン

スクリーン」は基本色と合成色を反転した上で掛け算してブレンドします。白はそのまま白、黒は消えます。白は反転して「0」になり、どの色と掛け算しても白、黒は反転して「1」になり、掛け算した相手の色に置き換わるということです。「スクリーン」はレイヤー効果の「光彩」のデフォルト描画モードであるように、ハイライトを自然に作るのによく使われます。薄い単色と写真をブレンドすると、半透明の白い膜を貼ったような効果が出ます。

覆い焼きカラー・覆い焼き(リニア)-加算

覆い焼きカラー」は基本色の明るい部分をより明るくしてブレンドします。明るい合成色にすると白い範囲が強く目立ち、白いライトを当てたようになります。これを利用して、金属の輝きや日差しに煌めく水面のような強い光を表現したい場合に使われます。

覆い焼き(リニア)-加算」は基本色が均一に明るくなります。「覆い焼きカラー」より、全体にムラなく白く、明るくなるので、真夏に照りつける太陽の明るさを表現したい時などに使われます。

色を明るくブレンドする描画モード
比較(明)・カラー比較(明)・スクリーン・覆い焼きカラー・覆い焼き覆い焼き(リニア)-加算の比較

オーバーレイ

オーバーレイ」は基本色の色の明るさに応じて「乗算」「スクリーン」を使い分けて結果色に反映させます。基本色の影と光をキープしながら基本色と合成色を混合するわけです。レイヤー効果に「カラーオーバーレイ」「グラデーションオーバーレイ」があるように、画像の明暗を変えずに色相を変化させる使い方ができます。

ソフトライト・ハードライト・リニアライト・ピンライト

ソフトライト」は合成色の明るさに応じて、基本色を明るく、または暗くします。合成色が明るい範囲はソフトなライトが当たったように明るく基本色を反映し、合成色が暗い範囲はソフトな影がさしたように暗く基本色を反映します。適用度が控えめな印象の結果色が生成されます。

ハードライト」は合成色の明るさに応じて、基本色を「乗算」「スクリーン」を使い分けて結果色に反映させます。合成色が明るい範囲はスポットライトが当たったように明るく基本色を反映し、合成色が暗い範囲は強い影を落としたように暗く基本色を反映します。金属の光沢や炎の強調など、コントラストを必要とする明るさの表現に使われます。

リニアライト」は合成色の明るさに応じて、基本色を「焼き込み」「覆い焼き」を使い分けて結果色に反映させます。合成色が明るい範囲は覆い焼きを適用したように明るく基本色を反映し、合成色が暗い範囲は焼き込みを適用したようにように集中的な暗さで基本色を反映します。「ハードライト」より人工的な印象になり、インパクトのある色相で強くアピールしたい時などに使われます。

ピンライト」は、明るい色で合成すると暗い範囲に合成色が強く反映され、暗い色でブレンドすると明るい範囲に合成色が強く反映されます。50%グレー1色でブレンドすると基本色が変化無しで表示され、黒・白・原色でブレンドすると基本色からは何も反映されません。Adobeの公式によると「ピンライト」は特殊効果を追加する時に役立つということですが、通常の使い方だと「ソフトライト」を若干はっきりさせたような印象になります。

ビビッドライト・ハードミックス

ビビッドライト」は合成色の明るさに応じて、コントラストを増減します。明るい範囲はよりコントラストを下げ、暗い範囲はよりコントラストを上げます。結果、明るさと暗さの距離が大きくなるので、基本色の輪郭が明瞭に反映されます。ベースレイヤーの模様を浮き上がらせながらブレンドレイヤーの色を反映させたい時などに使われます。

ハードミックス」は合成色と基本色の各チャンネルRGB値を合計し、255以上は255、未満は0になります。結果、どの色も黒・白・赤・青・緑のどれかに置き換わり、ポップアート風の効果が得られます。使う頻度は高くない気がしますが、線画抽出機能などと連携させると面白い絵に仕上がるかもしれません。

コントラストを強めてブレンドする描画モード
オーバーレイ・ソフトライト・ハードライト・リニアライト・ピンライト・ビビッドライト・ハードミックスを比較

差の絶対値・除外

差の絶対値」でブレンドすると、合成色と基本色の大きい方から小さい方を引き算したRGB値の色に置き換わります。白でブレンドすると基本色が反転し、黒でブレンドすると基本色が変化せずに反映されます。多くの場合、元画像とはガラリと雰囲気が違う結果になります。デザインに行き詰まった時など描画モードを「差の絶対値」にしてみると、ヒントが見つかることがあります。

除外」は「差の絶対値」とよく似た結果になりますが、コントラストが抑えられるので少しだけ落ち着いた印象になります。

減算・除算

減算」は基本色から合成色のRGB値を引き算します。引き算でマイナスになった場合は「0」になります。合成色が白ならRGB値がすべて「0」になりますから、黒に変化します。合成色が黒なら基本色が変化せずに反映されます。

除算」は基本色を合成色で割り算し、255を掛け算して結果色を生成します。マイナスになった場合は「0」、255以上なら「255」です。「除算」でブレンドする場合、変化しないか、明るくなるかどちらかです。合成色が黒(または同色)なら白に変化し、白なら基本色が変化せずに反映されます。特定の色味が出過ぎた写真と、特定の色と同系色の合成色を「除算」することで色調補正する使い方もできます。

色を比較してブレンドする描画モード
差の絶対値・除外・減算・除算を比較

色相・彩度・カラー・輝度

色相」は合成色の元色(色相)をベースに基本色の輝度と彩度を反映させます。合成色の色相を変えずにオーバーレイしたような印象になります。

彩度」では、基本色に合成色の彩度が反映されます。合成色の色相は無視され、彩度だけが基本色に乗る感じです。ブレンドレイヤーの彩度とベースレイヤーの彩度が近いと、ブレンドレイヤーのほとんどが消えてしまうこともあります。黒と白はどちらもモノトーンになっています。

カラー」は合成色の元色(色相)と彩度をベースに基本色の輝度を反映させます。彩度がプラスされるので、描画モードの「色相」よりも色の鮮やかさや陰りがはっきり出ます。

輝度」では基本色の色相と彩度に合成色の輝度だけが反映され、合成色の色相と彩度は無視されます。明るい基本色に描画モードの「輝度」でブレンドするとモノトーンに近くなり、暗い基本色ではくすみながらも色が出るので、セピア色の写真を作るなどの使い方ができます。

HSL(色相・彩度・輝度)の値に応じてブレンドする描画モード
色相・彩度・カラー・輝度を比較
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以上、Photoshopの「描画モード」について解説しました。レイヤーの順序を変えて背景に描画モードを適用すると、また違った効果が出るかもしれません。いろいろ試してみて下さい。