※ Adobe Photoshop 2024の画像で解説しています。
※スマートオブジェクトのサンプルに使用した写真はぱくたそのフリー素材です。(サイト掲載の写真・画像について)

今回はPhotoshopのスマートオブジェクトを使う利点や注意点など、「スマートオブジェクト」機能について詳しく解説します。
スマートオブジェクトの前知識
スマートオブジェクトの機能を知るために「ラスター画像とベクター画像の違い」「PhotoshopとIllustratorの役割の違い」について理解しておきましょう。
ラスター画像とベクター画像の違い
「ラスター画像」と「ベクター画像」はデジタル画像を2種類に分類する形式です。この2形式には大変大きな違いがあります。
- 画像を小さな四角い点(ピクセル・ドット・画素)で表現する
- ピクセル値が高いほど高精細な画像になる
- 微妙な色合いや陰影を表現できる
- JPGやPNGなど日常的に使われる画像の多くはラスターであるため互換性に優れ、様々なアプリで利用できる
- PhotoshopのPSDで編集するのは基本的にラスター
- 画像サイズが大きくなる
- 拡大・縮小、または過度に変形させると画像がぼやける
- 画像の色や線を数式によって表現する
- 画像が編集される毎に再計算されるため、どんなに拡大・縮小、変形させても画質が劣化しない
- ファイルサイズが軽い
- 様々な種類の印刷に対応できるため、出版・印刷物の入稿データとして優れている
- IllustratorのAIデータはベクター形式
- 色数が少なく、写真のような高精細な表現は難しい
- 互換性に乏しく、閲覧や編集ができるアプリが限られている
PhotoshopとIllustratorの役割の違い
元々、AdobeのPhotoshopとIllustratorは扱うデータ形式で役割分担されていました。
ペイント(フォトレタッチ)系のアプリであるPhotoshopはラスター画像(写真やCGイラストなど)の加工を専門とし、ドロー系のアプリであるIllustratorはベクター画像(ロゴ・マークや図案化されたイラストなど)の作成・編集を専門としています。
ただ、Adobeの場合はPhotoshopとIllustratorを連携して使うことが多いため、両者の間でよりスムーズに編集データの受け渡しができるように工夫されてきました。「スマートオブジェクト」もその流れで登場した機能と言えるでしょう。
スマートオブジェクトはどんなことができる機能?
- 画像を拡大・縮小しても画質が劣化しない
-
上述したように、Photoshopで扱うラスター画像は拡大・縮小・変形でぼやけます。ラスター画像をスマートオブジェクトに変換すると、編集時の画質の劣化を防ぐことができます。
縮小、拡大を繰り返した後の「スマートオブジェクト」と「元のラスター画像」の比較です。画質の違いは明らかですね。 関連記事※ Adobe Photoshop 2024、2025の画像で解説しています。 CGDOOR 今回は、Photoshopの「変形」操作の基本、「画像の拡大と縮小」についてフォトショの基礎を学ぼうとしている初心者向けに解説しま[…]
- 元画像はそのままでフィルター(スマートフィルター)を適用できる
- スマートオブジェクトを選択して「フィルター」を適用すると、レイヤーの配下に「スマートフィルター」レイヤーが追加されます。適用後にフィルターの名前をダブルクリックして、いつでも編集することが可能です。
- 元画像はそのままで歪みやワープなどの自由変形を適用できる
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スマートオブジェクトに回転・歪み・多方向に伸縮・遠近法・ワープを適用して自由変形させることができます。過度に変形させてもぼやけません。(※変形の作業中はスマートフィルターが一時的にOFFになり、作業完了後に元に戻ります)
スマートオブジェクトに適用された変形はプロパティの「変形のリセット」ボタン、または右クリック➔「変形の初期化」、または「レイヤー」➔「変形の初期化」でリセットすることが可能です。
- 画像の差し替えができる
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スマートオブジェクトを右クリックしてメニューから「コンテンツの置き換え」をクリック、ダイアログで差し替えたい画像をダブルクリックして画像の差し替えを行います。
画像の差し替えを活用する例としては、高解像度の重いデータの代わりに低解像度の軽いデータを使って、スマートオブジェクトの編集・加工作業をスピードアップさせるやり方があります。
作業が終わったら「コンテンツの置き換え」で高解像度データに差し替えます。
差し替えたデータが小さく表示された場合は「変形のリセット」と「イメージ」➔「すべての領域を表示」、カンバスサイズが小さすぎるだけなら「イメージ」➔「すべての領域を表示」を適用します。
- スマートオブジェクト化したAIデータをPhotoshopとIllustratorで編集できる
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Illustratorで作成したAIファイルからオブジェクトをコピーしてPhotoshopに「ベクトルスマートオブジェクト」としてペーストします。
編集中にプロパティの「コンテンツを編集」をクリックするとIllustratorでAIデータが開き、編集後に「ファイル」➔「保存」をクリックすれば再びPhotoshopに戻ります。この時、AIデータに加えた変更がベクトルスマートオブジェクトに反映されます。
PhotoshopとIllustrator間のデータの引き渡しが簡単になるため、作業効率が格段に上がります。 - リンクしたスマートオブジェクトを一括で変更できる
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スマートオブジェクト選択、メニューバーの「レイヤー」➔「レイヤーを複製」をクリックしてコピーします。コピーしたスマートオブジェクトはコピー元のスマートオブジェクトにリンクしています。
プロパティの「コンテンツを編集」をクリックするか、またはスマートオブジェクトのサムネイルにあるアイコンをダブルクリックするとPSBファイルが別タブで開くので、これを編集して「ファイル」➔「保存」をクリックします。この編集はリンクした2つのスマートオブジェクトに反映されています。
このように、コピーしたスマートオブジェクトを全て一括で編集することができます。
スマートオブジェクトの変換と解除
変換したい画像レイヤーを右クリック、メニューの「スマートオブジェクトに変換」をクリックする
変換したい画像レイヤーを選択、メニューバーの「レイヤー」➔「スマートオブジェクトに変換」をクリックする
変換したいスマートオブジェクトレイヤーを右クリック、メニューの「レイヤーをラスタライズ」をクリックする
変換したいスマートオブジェクトレイヤーを選択、メニューバーの「レイヤー」➔「ラスタライズ」➔「スマートオブジェクト」をクリックする
スマートオブジェクトについて、よくある勘違い
スマートオブジェクトに変換すると画質が良くなる?
スマートオブジェクトはあくまで「編集の過程で元画像を劣化させない」機能であり、画質が元画像を超えることはないので注意しましょう。
スマートオブジェクトはAIデータのように拡大・縮小できる?
スマートオブジェクトはAIデータのように、どんなに拡大してもぼやけないわけではありません。拡大・縮小を繰り返すことによる画像の劣化を防ぐだけで、スマートオブジェクトを元画像より拡大すればぼやけます。元画像の大きさの範囲内でリサイズしましょう。
ラスタライズしたスマートオブジェクトを元に戻せる?
スマートオブジェクトをラスタライズすると、格納されていたスマートフィルターなどは画像に統合されます。これをもう一度スマートオブジェクト化しても、元の状態には戻せません。フィルターが統合された画像がスマートオブジェクトの元画像になります。
スマートオブジェクトでできないこと
万能のようなスマートオブジェクトですが、できないこともあります。以下のように、元画像のピクセルを変更するような加工はスマートオブジェクトではできません。
- ブラシツール・鉛筆ツール・スタンプツールでの塗りはできない
- 消しゴムツールでの消去はできない
- 焼き込み・覆い焼き・ぼかし・シャープ・指先ツールでの描画はできない
- ピクセルを選択したラインツールや図形ツールで描画はできない
