※ Adobe® Illustrator® software (2025)を使って解説しています。


今回は、Illustratorの「ライブペイント」で色を塗る方法をご紹介します。
Illustratorのライブペイントとは?
Illustratorの「ライブペイント」とは、ペイント系の画像編集ソフトのように直感的な色塗りができる機能です。
「ライブペイント」を使うためには対象のオブジェクトを「ライブペイントグループ」に変換する必要があります。「ライブペイントグループ」に変換されたオブジェクトはレイヤーの順序は無視されて全て平面上にまとめられ、パスによって分割されます。
分割された「ライブペイントグループ」は「塗り」の領域(Adobe公式では「面」)「線」の領域(Adobe公式では「輪郭線」)で構成されます。面と輪郭線の両方にライブペイントツールで色塗りできます。
Illustratorのライブペイントはどんなところで使う?
Illustratorのペンツールでパスを描き、レイヤー分けして重ねたイラストに「ライブペイント」を使うメリットはあまり感じないかもしれません。普通に「塗り」と「線」で色・グラデーション・パターンなどで塗りつぶしを指定した方が早いでしょう。
「ライブペイント」の色塗りが便利に使えるのは、手書きした下絵をスキャナーで取り込んでパス化したイラストや、フリーハンドのツールで描いた線画、レイヤー分けが面倒な精緻な線画に対してです。
ライブペイントツールの使い方
ライブペイントツールは半角英数字モードで「k」を押すと使えるようになります。
ツールバーで機能を選択することもできますが、見つからない時は「シェイプ形成ツール」を長押ししてリストを引き出します。ここから「ライブペイントツール」と、個別の塗りや線を選択する「ライブペイント選択ツール」が選択できます。

- ライブペイントで色塗りしたいオブジェクトをすべて選択
- この例では、「線:黒、塗り:なし」に設定した線画に「ライブペイント」で色を塗っていきます。
別レイヤーになっているオブジェクトを選択して「ライブペイント」を実行すると、一番上のレイヤーに選択オブジェクトがすべて移動します。
ライブペイントで色塗りに使うサンプルの線画 - ライブペイントグループに変換
- 半角英数字モードで「k」を押すと、「ライブペイント」が起動してカーソルが色見本と組み合わされたバケツ型になります。選択オブジェクトに近づけると「クリックしてライブペイントグループを作成」というメッセージが表示されるので、任意の場所をクリックします。
「⚠ライブペイントグループに変換すると、ブラシ、効果、透明、線の位置オプションなどの複雑なアピアランスが失われる可能性があります。」という警告メッセージが出たら、「OK」をクリックしてライブペイントグループに変換します。(※アピアランスの保持に不安がある時は、ライブペイント実行前にオブジェクトをコピーしておきましょう。)
「オブジェクト」メニュー➔「ライブペイント」➔「作成」でもライブペイントグループに変換できます。 - 「隙間オプション」でオブジェクトのオープンパスを検出
- ライブペイントグループに変換すればライブペイントで色塗りする準備は完了ですが、手描きの線画にはクローズドパスに見えても隙間の空いたオープンパスが混じっていることがあります。
コントロールパネルの「隙間オプション」アイコンをクリックして設定画面を開きます。
- 隙間の検出 : ここにチェックを入れると、隙間が検出されて塗りの色がはみ出すのを防いでくれます。ただ、動作が重くなるので、隙間に問題がなければチェックを外しておきましょう。
- 塗りの許容サイズ : 検出する隙間の幅を設定します。「狭い隙間」「中程度の隙間」「広い隙間」「カスタムの隙間(数値を指定)」から選択します。
- 隙間のプレビューカラー : 検出した隙間の場所を設定したカラーで示してくれます。隙間のプレビューカラーの初期設定は「サーモンピンク」、その他「ライトブルー・グリーン・ミディアムブルー・マゼンタ・シアン・ライトグレー・ブラック・イエロー」の選択肢があり、カスタムで好きな色を指定することも可能です。
- 検出された隙間 : 隙間が検出されると、その数がここに表示されます。
- パスで隙間を閉じる : クリックすると隙間を閉じるパスが生成されます。塗り・線ともに色はつかないので見た目は変わりません。「⚠このコマンドは隙間の検出をオフにし、現在検出されている隙間をアートワークにパスを挿入することによって閉じます。続行しますか?」という警告が出ます。警告文にあるように実行後は隙間の検出がオフになるので、動作の重さも解消されます。
この設定画面は「オブジェクト」メニュー➔「ライブペイント」➔「隙間オプション」でも開きます。 - ライブペイントツールで色を塗る手順
- 「ライブペイントツール」を使って「塗り」と「線」に色を塗っていきましょう。
「ライブペイントツール」のカーソルは色見本と組み合わされたバケツ型です。3つの色見本はスウォッチパネルの順序で並んでいます。キーボードの「→」「←」を押すとスウォッチが切り替わり、塗りに適用されるのは中央の色です。スウォッチパネルにない色を選択した場合は色見本が1つになります。
ツールパネルの「ライブペイントツール」アイコンをダブルクリックすると、設定画面が開きます。
- 「塗りをペイント」「線をペイント」 : どちらかだけのペイントに切り替えられます。両方にチェックを入れれば、どちらもペイントできます。
- カーソルスウォッチプレビュー : チェックすると、カーソルのバケツの上に表示されているスウォッチの色見本が非表示になります。
- 強調表示 : カーソルを近づけると塗りが適用される範囲が枠線で強調表示されます。「カラー」と枠線の「幅」が自由に指定できます。
- ヒント : クリックすると、「ライブペイントツール」の使い方のヒントが2つの画面で表示されます。
使用するグラデーションやパターンなどを予めスウォッチに追加しておくと便利です。 「ライブペイントツール」の便利な使い方- 「塗りをペイント」「線をペイント」のどちらかだけを設定している時、Shiftを押している間は、もう一方に切り替わります。
- 画像内から色を拾いたい時は、Altキーを押してスポイトツールに変更して実行します。
- トリプルクリックでペイントすると、グループ内の同じ「塗り」または「線」の領域がすべて同じ色・グラデーション・パターンでペイントされます。
- ライブペイントグループにパスを結合
- オープンパスやクローズドパスを追加して、ライブペイントグループに結合させる方法です。
ライブペイントグループ全体を描き足したパスも含めて「選択ツール」で選択します。「ライブペイント」のコントロールパネルにある「ライブペイント結合」をクリックすると描き足したパスがライブペイントグループに結合されます。
この操作は「オブジェクト」メニュー➔「ライブペイント」➔「結合」でもできます。 - ライブペイントグループを拡張
- ライブペイントグループを「拡張」することで、通常のオブジェクトに変換できます。「ライブペイント」のコントロールパネルにある「拡張」をクリックすると、見た目に変化はありませんが、普通に編集し、効果も付けられるオブジェクトに変換されています。グラデーションの変形や角度調整などは拡張後にやるといいでしょう。
この操作は「オブジェクト」メニュー➔「ライブペイント」➔「拡張」でもできます。 - ライブペイントを解除
- ライブペイントを解除するには、「オブジェクト」メニュー➔「ライブペイント」➔「解除」をクリックします。
ライブペイントグループを拡張せずに「解除」すると、「塗り:無し」で「線:黒・0.5pt」のパスになります。線はバラバラに分割されているので、「ライブペイント」を適用する前の状態には戻りません。「ライブペイント」を適用する前にコピーを保存しておくか、「解除」ではなく「拡張」することをおすすめします。
「ライブペイント」の分割でイラストから簡単に線画抽出
記事の上の方で「Illustratorのペンツールでパスを描き、レイヤー分けして重ねたイラストに「ライブペイント」を使うメリットは少ない」と書きましたが、パスを重ねたイラストの線画だけを抽出するのに「ライブペイント」が使えるのでご紹介します。
- Illustratorでクローズドパスを重ねて作ったイラストを複製し、「ライブペイントグループ」に変換してパスを分割します。
- 「塗り」を「なし」にします。
- コントロールパネルの「拡張」をクリックします。
- 線画だけが抽出されています。

「ライブペイント」でよくある問題と対処法
➔ 文字はアウトライン化し、装飾的なブラシで描いた線などはアピアランスを分割または分割・拡張しておきます。
➔ キーボードの「→」「←」を押して色を選択して下さい。
➔ ライブペイント選択ツールに切り替えましょう。
➔ 隣接している塗りを仕切るパスがあるなら、ライブペイント選択ツールで選択して削除できます。仕切りの線がなくなれば、仕切られていた2つの面が1つのクローズドパスになります。

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「ライブペイント」は使い慣れない内はうまくいかないことの多い機能だと思います。それでも、線画イラストを簡単に色塗りできる便利さは、さすがAdobeと言えるでしょう。下絵をパスデータに変換し、Illustratorで仕上げるというプロセスでデザインするなら、「ライブペイント」を使ってみて下さい。